Money 20/20

先月、オンライン決済に関するイベントがあったので行って来ました。Pay palやAdyenといったオンライン決済に関する企業が一同に会するため、今後のオンライン決済の動向をしるためには絶好の機会です。
様々なプレゼンテーションや起業の担当者との会話を踏まえて感じたのは以下の三点です。

1.世界は急速にオフライン決済からオンライン決済へしているものの、一方でみんなが同じような問題を抱えている

 

現金によるオフライン決済からオンライン決済に移行するメリットのひとつが金銭詐欺(Fraud)の防止です。 

現金取引が関わる限り、決済がデータで記録されない部分が生じてしまうため、店舗と消費者が結託して架空 の取引を作製し、支払に不正に入手した現金を用い、資金洗浄を行うマネーロンダリングの温床となってしま います。
国際的に資金の出所を明確化するような税務上の強化が進む中、企業としてもマネーロンダリングにもてあそ ばれないための様々な工夫をする必要があり、そうなると現金取引は最小限にとどめておきたいところです。
そうするとオンライン決済は取引の全容がデータで把握されるため、マネーロンダリングの入り込む余地を皆無にすることができるため非常に優れた決済手段です。
しかしながら、オンライン決済が金銭詐欺に対する完璧な解決策となるかというとそうではないため、データを活用した金銭詐欺検知のソリューションがたくさん提案されていました。
もっとも多く見受けられるのが、機械学習を用いた不正パターンの統計処理による検知ツールで、データ分析によりビッグデータの中から異常値を見つけ出そうというアイデアです。
一方で、それらのツールには①導入に時間がかかる②一件あたりの処理時間が増加するため、顧客にストレスを与える という欠点があるため、結局のところ最もメジャーな不正検知手段はビジネスルールによる異常値判定です。
これは、単純に「取引金額が10万円以上だったら異常、10万円以下なら正常」というルールを当てはめ、異常を検知するものです。業務知見に基づき、ルールは設定され、また単純なルールであればIT処理の負荷もあまりないため、処理時間を増加することなく導入が可能なため、いまだに最も一般的な不正検知手法として用いられています。オンライン決済が普及してきているいまであっても、主流はいまもこういった旧来の不正検知手法であり、機械学習などのいわゆるAIをもちいた処理が一般化するのはまだ先のようです。

2.オンラインベンダーは雨後のたけのこ状態

オンライン決済手段は有名どころのPaypalを筆頭に、中国のAlipay、アップルのApple pay、アマゾンのAmazon Pay、あるいは仮想通貨を用いたBit payなど様々な手段が登場しています。消費者にたくさんのオンライン決 済手段が生まれる一方で、商品・サービスを販売・提供する企業側は消費者が用いたオンライン決済手段とは別の決済手段でお金を受け取りたいというニーズがあり、また企業側が使いたいオンライン決済手段も多数あるため、支払と受け取りのオンライン決済手段はN:Nの関係性があります。
このNとNをつなぐ役目がアグリゲーター(Aggregator)あるいはアクワイヤラ(Acquirer)とよばれる企業が果たしている部分で、オランダのAdyenや米国のStripeやFirst dataが消費者には見えない裏舞台で活躍しています。実はこれが非常に大きなビジネスになる分野、既になっている分野で、既にコモディティしていて、各社サービスの充実度、コストなどを差別化して世界の覇権を今争っているところで
す。
欧州においてはStripeはさほど目立てていないためか、Stripeは会場で最もお金がかかりそうな「ビーチ付き」の場所にブースをだして、来場者に優位性を積極的にアピールしていました。
一方で欧州の覇者のAdyenは参加すらしておらず、逆に余裕を感じさせました。

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オンライン決済プレーヤーの種別と役割
3.日本勢はほぼ皆無の中一人目立ったソフトバンクビジョンファンド

日本出身の私としては、日本企業に是非頑張ってもらいたいなと思っているところなのですが、日本勢のプレゼンスはほぼ皆無。JCBと東京都Fintech課の方がブースを出していましたが、プレゼンテーションはソフトバンク一社のみでした。しかしながらソフトバンクのプレゼンテーションは最も大きいメインステージでかなりの人の注目を集めていました。
ソフトバンクが他社と違うのは、彼ら自身はオンライン決済ベンダーではなく、「投資家」として登場しているところ。これは私が見た中ではソフトバンク一社だけでした。こういったセミナーにおいて確実にプレゼンスを見せておくソフトバンクのしたたかさと、目の付け所が先を行っているところは一般的な日本企業にはないところであり、非常に関心しました。

 

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