外国人技術者の活用

オランダでの生活も二週間が経過。現地企業での仕事も始まって、ようやく生活している感がでてきました。

わたしが勤務するTakeaway.comは、いわゆるフードデリバリービジネスを手がけており、日本では知名度はあまりないですが、オランダ・ドイツおよ びその周辺のドイツ語圏ではマーケットシェアがトップで、いわばUbser Eatsのオランダ版といったところです。

ヨーロッパ、特にオランダでは、外食は特別な時のものであり、日本のように日常的に外食する文化ではなかったようですが、近年のライフスタイルの変化により、特に若い世代では外食する習慣が広がっています。

それが後押しとなり、フードデリバリー・ビジネスも急速に拡大しています。


私が所属するBusiness Intelligenceチームは、ウェブや携帯の注文履歴データを用いて、自社のサービスを利用するエンドユーザーとレストランの 質と量を高めるための示唆を導出するというのがミッション、ということになります。
そのため、TableauのようなBIツールや、Rを使った購買予測モデルの構築を行い、セールスやマーケティングといったビジネスユーザーに示唆を提供して、業務施策を実行していくことになります。

チームは多国籍の人材で構成されており、オランダ・ドイツ・フランス・インド・中国が主な出身地です。チームに日本人は私一人だけで、全社でも日本人はたぶん私だけのはずです。

この会社で働く機会を頂いたきっかけが、アムステルダム市が主催するProject Amsterdam(https://project.amsterdam/)という世界から技術者を募集 するプログラムなので、昨年9月に実施されたのが第一回で、今年の3月に第二回を実施するとのことです。
このプログラムを通じて採用いただけたことで、HSM(Highly Skilled Migrant)という、通常の労働ビザよりもメリットがあるビザで勤務することが可能となりました。

日本で勤務していたときも、かなり国際的なチームで仕事をしていましたが、オランダで仕事をするまでのこういった過程を経験して、国ごとの外国 人技術者の採用の政策に興味が出始めたので、日本・オランダと、外国人の活用にかねてから積極的なシンガポールの三国の外国人技術者に対する誘致政策について調べてみました。

比較してみた結果、以下が気づいた点です。公的機関のレポートに基づいた部分もありますが、一部私見も入ってます。

 

【オランダ】

  • 高度の技術を持った移民の受け入れに積極的なものの、全体的な方向性は未だ不明確である。
  • 一方で、減税の付与と配偶者の労働許可と いうメリットの訴求は、移民側にとって魅力的な施策となっており、技術を持った移民の効率的な受入れの実現に結びついている。
  • 但し、移民の受入れに大きな成功を収めているスイスやデンマークと比較し、知名度および受け皿となる企業のブランド力・絶対数に劣るため、その改善が必要。

【日本】

  • オランダと同様に、高度の技術を持った移民の受け入れに積極的になりつつあるものの、方向性が研究職に偏っており、ビジネス面で活躍す る人材を強化しているとは言い難い。
  • また、移民側も、日本の労働環境に魅力を感じているとは言い難く、そのことが移民の受入れ促進上の障壁とな っている。

シンガポール

  • 長年国策として移民を積極的に受け入れてきたため、受け入れを強化したい移民のスキルが明確に定義されており、かつ定着化のた めの施策も明確であり、各種の労働ビザと申し込み条件を設定している。
  • 一方で外国人労働者の国民に占める割合が46%に達したという予測もあり、労働環境に恵まれていない自国民の不満が高まっているため、近年はむしろ移民の受入れを厳格化している。

外国人の会社勤めの技術者の方が労働許可を得るにあたっての条件・メリットは以下の通りです。

 

外国人労働者比率※ 高度人材獲得の上での課題 条件 メリット
オランダ 12.1% オランダの労働市場と優遇措置への認知度の低さ ・年収の下限設定がある(30歳以上: 月収€4,404以上、30歳以下: 月収€3,229以上等)
・事前に雇用主が、政府から許可を与えていること
・収入の30%について、税金がかからない
・配偶者の就労
・自営業が可能
日本 1.8% 長時間労働、評価システムの不透明性、昇進の遅さなどによる日本の労働環境への不満 ・年収の下限設定がある(年収300万円以上、年収と年齢により、加点される)
・学歴・職歴・年収・年齢などに基づいたポイントが70点を越えること
・大学での研究活動と事業の経営を並行して行うなど複数の在留資格にまたがるような活動を行うことができる
・在留期間「5年」の付与
永住許可要件の緩和
・配偶者の就労
・一定の条件の下での親の帯同の許容
・一定の条件の下での家事使用人の帯同の許容
シンガポール 46% 外国人労働者を多数受け入れていることによる国民の不満の拡大。現在はむしろ受け入れ条件を厳格化。 ・年収の下限設定がある(月収S$3,600以上)
・管理職、専門職など高度な技術を保持すること
・配偶者の就労(2018年より月収S$6,000以上の条件を満たす場合のみ)

※2017年、国連統計の推定値