最近、仮想通貨やFintech等の次世代の金融システムと目される仕組みが注目を集めていますが、オランダ(及びEU内)では、すでに日本とはかなり異なる決済の仕組みが日常的に活用されています。
最大の違いは電子マネーの普及度合いです。日本では電子マネーの決済比率が13.6%(2016年)とのことですが、オランダの場合50.3%(2015年)です。
オランダにおける2010~2015年のデビットと現金決済の推移
現金決済ではなく、電子マネーで決済をすることで、主に以下のメリットがあります:
- 商取引が高速化する
- 場所を選ばない商取引が可能になる
- お店・買い物客の双方が現金を持ち歩かなくて良いため防犯につながる
- カードだけ持ち運べばよいので手軽である
- 使用履歴が残るので、資産管理しやすい
- 場所を選ばない商取引が可能になる
そもそも電子マネーの普及につながっている最大の要因は、全EU圏内の振込手数料の無料化・即時化です。1999年の単一通貨「ユーロ」の誕生に伴い、EU圏内での決済も効率化する必要性がでてきました。そのため、EUではSEPA(Single Euro Payments Area)というユーロ通貨圏全域をひとつのリテール決済圏として統合するプロジェクト を実施し、2014年に全EU圏で本格始動しました。
オランダでは、それに先んじて、2005年に銀行とリテイラーがひざを突き合わせて議論し田結果、旧来から他国より普及していたデビットカードというインフラに、SEPAの決済システムをつなげた仕組みを導入した結果、デビットカード+電子マネーというオランダ独自の効率的な決済システムができあがり現在に至ります。オランダという国は、節目節目で官民が「ひざを突き合わせて」話をしたエピソードが満載なのですが、それは小国かつ資源がないため、そうでもしないと生き残れないという危機感がそうさせているようです。
結果として、商取引が即時化・簡素化・低価格化し、現在では個人間のお金のやり取りのようなレベルまでその効果が現れています。
例えば、退職する同僚向けのプレゼントを買った際に、一人5ユーロずつ払ってね、という場合にも、支払った人のIBANを聞いて、そこに直接送金すればOK。あるいは、募金の際も振込先のIBANを聞いて、送金しておわり。オランダ国内であれば、即時相手方の口座に振込みが反映され、EU圏内のオランダ以外の国であっても、最大1日で振込みが完了するとのことです。もちろん手数料は無料。
日本では、同一行宛ての振込みであっても108円、他行宛で金額が大きいと432円程度の振り込み手数料がかかり、かつ15時までであれば即日振込みが完了だが、15時以降だと翌日の振込みになるというのが大多数です。
買い物の際も、現金で決済することはほとんどなく、デビットカードでピッとタッチすれば終わり。ほとんどの決済がデビットカードでなされるので、後からネットバンキングのサイト、あるいはスマートフォンのアプリから使用履歴、残高をリアルタイムに確認することが可能です。
また、会社の同僚と昼食に行った際に、個々人が食べたものを別々で支払をしたいことがよくありますが、現金決済だと一人ひとり現金を店員に渡し、店員がおつりをレジから出して渡すという一連の作業を、人数分行わなければいけないので結構な手間です。デビットカードの決済であれば、個々人がカードをスキャンすればよいのでスムーズです。日本にいたときに、使用履歴を残したかったのでクレジットカードでの支払を心がけていましたが、昼食の支払にクレジットカードが使えないレストランがかなりあるのと、使えても決済のデータの処理速度が遅くて、かえってストレスである場面があり、違いを感じます。
日常的に現実に行われている決済の段階で、日本とオランダでは大きな差がついていることを感じざるを得ませんが、当然のことながらオランダでは、さらに先を見据えたフィンテック関連のスタートアップ企業も多く存在するため、今後の両者の決済手段の差はますます広がっていく一方なのではないかと感じます。
<参考>
SEPA: http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/kessai_sg/siryou/20141020/04.pdf