データ分析者の履歴書のトレンド

データ分析チームで管理職をしていると、常々募集しているデータ分析者のポジションへの応募者の履歴書を見続けることになる。昨今は勤務先の会社が世界的にも有名になってきて、かつコロナ化でフードデリバリーがより売り上げを上げ、注目も浴びているので、応募者の質というのは3年前とは比較にならないほど上がっている。

そのような中で、今の会社に勤務を始めた約3年前と比べて、応募者の履歴書の書き方、あるいは表現の仕方というのも時代の流れとともに変わっている。たった3年、ではあるが、データ分析の世界の3年はかなり変化が進んでいるものである。

かつては普通のワードあるいはPDFのA4書きの履歴書が数枚、かつCover Letterでなぜ私はこの会社のこのポジションに応募しているかというのをつらつら書いているのを添付するというのがトレンドだったが、今のトレンドは①簡素化②ビジュアルに訴える③GitやTableau Publicにデータ分析の技術を盛り込んだ模擬版を作って技術力をアピール である。

①簡素化

A41枚にすべて盛り込む。これは非常に重要な技術であり、かつ履歴書を見る側のニーズも踏まえていることを暗にアピールできる。インド系のこてこて技術者はよく10枚にも及ぶあれもできるこれもできるという履歴書を送ってくるが、これは即アウトである。なぜならば、データ分析者はテクニカルにだけ優れていればいいというものではなく、ビジネスニーズを理解し、それに即したソリューションをテクニカル面の可否を考慮して提案し、ビジネス側にできるだけテクニカルな用語を使わないで説明する必要があるからである。つまりは、対話者の知識・技量を考慮して、コミュニケーションの仕方を柔軟に変えていくというコミュニケーション能力が求められるのである。

従って、「忙しくて5分以上一つの履歴書に時間を費やすことができないデータ分析部門の管理職の状況を把握し、短時間、具体的には1分以内でGo/No Goを判断しやすいコンテンツは何か」という「ニーズ」を把握して履歴書を書くことが正解なのであり、自分の話したいことを自分の知識だけしか考慮せずにつらつらと何ページも、しかも文字だけで書くというのは、私はデータ分析者として適していないですと言っているのと同じなのである。

ちなみにワードで履歴書を書くのもNGであり、PDFにすべきである。理由は簡単で、①ワードだとファイルを開ける人のパソコンのOSやらバージョンやらでレイアウトが崩れるリスクがある②開けるのに2・3クリック余計に必要③内容を改ざんする余地を残した情報の伝達手段であるという昨今重要な情報セキュリティー上の考慮がなされていないのでビジネスセンスがないと判断される ためでえある。

②ビジュアルに訴える

良い例としてよく見るのが、以下のようなものである:

SQL:★★★★☆

Python:★★★☆☆

R:★★☆☆☆

何が基準に★一つなのか、という突っ込みはどうしても残るが、主観的・客観的かは不明としても、定量的に物事を数量するということはデータ分析の基礎である。従って、主観的に「私のSQLスキルに比べて、Python/Rはちょっと自信ないのです」というのを星の数で表現しているだけであっても、私個人的にはこの表現手段はありである。というのも、これをみて「ふーんSQL得意なのね、じゃあ具体的にはどのような案件をやってきたのだろうか?」と履歴書の職歴のところを見たくなるようにストーリーが組み立てられるからである。

次に顔写真もかなり重要である。顔の良しあしで判断しようというのではなく、履歴書というのは数10人・数100人のなかから自分を選んでもらうものである。選んでもらう上では、記憶に残らないと意味がないわけで、そういう意味でその人固有の「顔」を覚えてもらうというのは重要である。また顔写真を載せていても、またよくあるインド系のNGがなぜか顔写真の縦横の縮尺が無駄に変わっていて、顔が伸縮しているやつ。これは自分をアピールすることを考慮していないと受け取られるし、所定のスペースに手元の写真が納まらないのであれば、5分かけて加工すればいい。その技術がないのであれば、それはそれでデータ分析者として技術面で失格なのである。

最後に、データ分析者というのはデータ分析の要件を出してくるビジネス側がわかりやすいようにデータを情報あるいは示唆に加工して、消費しやすくして提供することが仕事である。従って、履歴書のデザインをとっても、消費者である履歴書の閲覧者が内容を把握しやすいようにレイアウトであれ、図表であれ、テキストの文章であれ、一言一句工夫して提供することを考えるべきである。その意図が考えられない履歴書というのはつまり、そのデータ分析者はビジュアライゼーション・レポーティング能力が低いということを露呈してしまっていることになり、履歴書の閲覧者は2秒で興味を失うと考えたほうが良いのである。

③GitやTableau Publicにデータ分析の技術を盛り込んだ模擬版を作って技術力をアピール

長いタイトルであるが、これが最近はやりのトレンド。Git Hub上には、自分のPythonやRのコードを公開できるし、再利用も促すことができる。その内容ズバリが自身の技術力を示す。同様に、Tableau  Publicも自分の作品を公開することができるので、履歴書にリンクを張っておけば、興味を持った履歴書の閲覧者はそこに行って応募者の技術力を具体的に把握することができる。

結局、世界中で使われている技術が標準化された現在のデータ分析の世界では、履歴書であれもできますこれもできますというよりも、具体的に自分の作品を見てもらう、あるいは履歴書自体をデータ分析技術で作ってしまうほうが手っ取り早いのである。