スタートアップが成熟した組織に移行するときに起きること

スタートアップ企業は華々しくその成長期を謳歌する。右肩上がりの売上、ほぼ無制限の投資、新しいオフィス、毎月大量に入社してくる新しい仲間たち、きらびやかなパーティー

しかしどれも永久には続かない。パーティーには終わりがあるのだ。否、パーティーは続くかもしれないが続編のパーティーに呼ばれるには異なる資格が求められる。成熟期の組織には、異なる種類の人間が求められるのだ。

それは2部から1部に上がったサッカーのクラブチームに似ている。2部で通用した肉弾戦が1部では通用しなくなる。従って1部に上がると1部の戦い方を知ったプレーヤーは補強されるのはよく聞く話だ。

スタートアップ企業にもそれが起きる。大きくなった組織には、大きな組織の運営を知っている人材が必要となるのだ。もちろん創業以来の中核メンバーの中にはその変革をわたりきれるメンバーもいるが全員ではない。変化についていけず、大きくなった組織では結果が出せず、肩書だけは立派になったもののパフォーマンスが伸び悩むもの。あるいは外部から参画した大組織運営のプロが突然上司になって、いままでのやり方が否定されたように感じ、モチベーションが下がるもの。

外部的には同じ組織でありながら、内部ではなかなか壮大な血の入れ替えが起き、それは一筋縄で行くものではない。創業以来のメンバーが中核から外れる、あるいは組織からいなくなるということは、組織のカルチャー自体の変化を意味する。組織のカルチャーが変わったらもはやその組織は別の組織である。以前のような革新的な組織ではないかもしれない。

一方で経営陣にしてみれば、大きくなった組織を安定化するためには血の入れ替えはやむを得ない。苦渋の決断である。彼らとて昔からの旧知のメンバーは中核に残したいが、そうなると組織は安定しない。

そに企業が株式公開しているのであれば、選択肢はより限られる。株主利益の最大化が第一目標となるため、組織安定化を目指すしかなく、ゆえに大規模な組織の運営に長けた人材を外部から登用し、多少創業以来のメンバーが抜けるとしても大規模化を推し進める。またその変化をなるべく早く実現するためにビジネスコンサルタントを雇い、Business Transformationプロジェクトを大々的にはじめる。なおビジネスコンサルティング会社はそのような変革に豊富な経験があると風聴しながら、本当はほとんど経験がなく、冷や汗物で乗り切って、その経験を元に次のクライアンントに売る機会を狙っている。

兎にも角にも、組織は成熟したときに大組織に移行する。カルチャーはスタートアップの時から変化するかもしれないが、それは必要な変化である。スタートアップのときの自由で楽しい雰囲気が多少失われ、淡白な秩序だった組織に変わるかもしれないが、そういうものなのである。世の中には秩序の少ない、自由な環境が人間もいれば、逆にそれを無秩序で統制が取れていない環境とみなし毛嫌う人間もいる。組織の成熟とともに、そこに属する人々が入れ替わるのは必然なのである。